雨が街路樹をかむカニの鋏
そして告白したい女である光線がしゃべり出す
日本語は孤独なビルの階段を
ダチョウなどよりも早く駆けおりて
東京の夜の内部に出没するモーターカーたちに明滅し
ぼくらのリヴィング・ルームの窓ガラスをぶちこわして
父の花束をほうりこむのだ
<引用終>
パラフィン紙に包まれた蒼い表紙を開くとワインレッド
上田敏雄の詩集『薔薇物語』をぱらぱらとめくる
引用したのは62ページの一部
「讃美歌のためのアルゴ」の一部
この詩の「父」は誰をさしているでしょう?「アルゴ」って何でしょう?
ナンテことよりも
祖父の書いた文を読むと感じる独特のリズムが好き
敏雄節!
<雨が街路樹をかむカニの鋏>
<そして告白したい女である光線がしゃべり出す>
シャレている
こんな文は私の頭から出てこない
祖父が「神学の概念の詩学への導入」を試みたから
キリスト教のカトリックに挑んだから
もともと神学から距離を置いて生きてきた私は
祖父の『薔薇物語』には近づきがたい
それでもなんだか時々読んでしまうのは
カニの鋏やダチョウのおかげ♪